EBPMの参考資料・一次資料

EBPMを学び、比較し、実務に引き寄せて考えるための資料、国際事例、公式情報への入口です。

EBPMに関する資料は多くありますが、いきなり全部読むと迷いやすくなります。このページでは、初めて読む人が順番に理解できるよう、参考資料をテーマ別に整理しています。

このページでは、制度の原文、評価方法のガイド、実際の効果を調べた研究、行政の公開記録を分けて紹介します。同じ「エビデンスに関する資料」でも、答えられる問いは異なります。何が分かり、何までは言えないかを確かめながら、必要な資料へ進んでください。

目的から、読む資料を選ぶ

EBPMを初めて学ぶ方は、日本語の基礎解説を読んでから、01のGAO資料へ。評価を企画・依頼する方は、02のMagenta Bookへ進んでください。複数の選択肢の費用・便益・リスクを検討するときは、03のGreen Bookが対応します。

海外の具体的な効果検証を知りたい方は、04の英国の納税研究と05の行政実験を横断した研究を続けて読む構成にしています。海外の制度を調べるときは06〜09、日本の行政事業の公開資料を探すときは10へ進んでください。

EBPMの全体像と、政策評価の設計を学ぶ

発行:U.S. Government Accountability Office(米国会計検査院)

発行年:2023年

資料番号:GAO-23-105460

種別:公的機関の実務ガイド

言語・形式:英語/概要HTML・報告書PDF

何が分かるか:目指す成果の計画、エビデンスの評価・構築、意思決定での利用、継続的に学習する組織づくりを、13の実務上の取り組みとして整理した資料です。分析結果を作ることと、それを行政で使うことのつながりを確認できます。

最初に読むところ:掲載ページの「Fast Facts」「Key Takeaways」。必要に応じて報告書の各実務項目へ進んでください。

読む際の注意:米国の制度、過去の監査報告、調査等を踏まえた実務整理です。13項目それぞれの因果効果を実験で証明した資料ではなく、他国での有効性を一律に保証するものでもありません。

発行:HM Treasury/Evaluation Task Force

版:2026年版

種別:英国政府の評価ガイダンス

言語・形式:英語/HTML・PDF

何が分かるか:実施過程の評価、介入が生んだ変化の評価、費用に見合う価値の評価を区別し、問いに応じた方法を選ぶための資料です。定量・定性の情報、実験・準実験、理論に基づく評価などを、評価目的と結びつけて検討できます。

最初に読むところ:「Executive summary」から読み、評価を計画する場合は第2章、方法を検討する場合は第3章へ進んでください。

読む際の注意:特定施策の効果を示した研究ではなく、評価を設計・実施するためのガイドです。RCTを行ったという名称だけで、実装の質、費用、公平性、他の地域での効果まで判断することはできません。

発行:HM Treasury

版:2026年版

種別:英国政府の事前評価(appraisal)ガイダンス

言語・形式:英語/HTML・PDF

何が分かるか:目的を達成するための複数の選択肢について、社会的な費用・便益、リスク、不確実性、便益や負担の分布を検討するための資料です。金額に換算できない影響も含め、判断に必要な情報を整理します。

最初に読むところ:第2章の全体像。便益や負担が誰に及ぶかを検討するときは、第7章の分配・地域別分析へ進んでください。

読む際の注意:主な対象は承認・実施前の選択肢の検討で、実施した施策の評価を扱うMagenta Bookとは役割が異なります。費用便益比だけで政策を機械的に決めるための資料ではありません。

海外の効果検証を、原著論文で確かめる

ここでは、実際に何を比較し、何が変化したかを読むための研究を紹介します。納税を促す文面の研究と、行政実験・学術論文の結果を比較する研究は、別の問いに答える資料です。続けて読むことで、個別の結果と一般化の範囲を分けて考えられます。

著者:Michael Hallsworth/John A. List/Robert D. Metcalfe/Ivo Vlaev

掲載:Journal of Public Economics, 148, 14–31(2017年)

種別:査読付き原著研究/フィールド実験

対象:研究実施時の英国で、所得を申告したものの税が未納だった納税者

言語・形式:英語/書誌・抄録HTML、大学公開の著者最終稿PDF

何が分かるか:税の督促状に記載するメッセージを無作為に割り付け、納付行動を比較した研究です。通常の督促状に社会規範等のメッセージを加えた一部の条件で、納付率の上昇や徴収の前倒しを報告しています。

最初に読むところ:抄録の後に、対象者、通常の督促状との違い、納付を測定した期間を確認してください。

読む際の注意:未納税の納付を促すことと、所得の過少申告を減らすことは別です。徴収の前倒しを恒久的な増収と同一視せず、この研究だけで日本や他の制度にも同じ効果があるとは判断しないでください。

注記:大学公開版は著者最終稿です。出版版とは体裁等が異なり、出版版本文の閲覧には購読が必要な場合があります。

著者:Stefano DellaVigna/Elizabeth Linos

掲載:Econometrica, 90(1), 81–116(2022年)

種別:査読付き原著研究/行政実験データの横断分析

対象:米国の2つのナッジ組織による研究対象期間の実験群と、比較対象の学術論文群

言語・形式:英語/出版社掲載ページ

何が分かるか:行政のナッジ実験群と学術誌に掲載された実験群を比較し、平均効果の違いと、その背景にある出版選択、検出力、介入の特徴等を検討した研究です。論文で読んだ大きな効果を、そのまま実務の期待値にしてよいかを考える材料になります。

最初に読むところ:抄録と序論から読み、次に比較する実験群の選び方を確認してください。数式部分を読み切る前に、何と何を比較しているかを押さえます。

読む際の注意:同じ施策を小規模と大規模に無作為に分けた実験ではありません。効果の差を規模拡大だけの結果とは断定できず、ナッジ以外の政策すべてに同じ結論が当てはまるわけでもありません。

海外のEBPM・政策評価制度を、原文で読む

以下は、エビデンスを作り、共有し、判断に使う仕組みを確認する資料です。法律、政府方針、ネットワーク、政策形成ガイダンスは、それぞれ役割が異なります。制度が存在することと、その制度が期待どおりの成果を生んでいることは区別して読んでください。

発行:Evaluation Task Force

種別:英国政府によるネットワークの公式説明

言語・形式:英語/HTML

何が分かるか:既存研究の収集・統合、エビデンスの不足を埋める評価、実務家への知識の提供などを通じ、政策判断でのエビデンス利用を支える仕組みです。

最初に読むところ:「Introduction」と「The What Works Network」。研究を実施する機能と、複数の研究をまとめて利用を支える機能の違いに注目してください。

読む際の注意:このページはネットワークの説明であり、特定施策の効果検証そのものではありません。個別施策の判断には、各センターが扱うレビューや原著研究の確認が必要です。

識別情報:Public Law 115-435

成立日:2019年1月14日

公開元:U.S. Government Publishing Office/GovInfo

種別:法律の成立時原文

言語・形式:英語/書誌HTML・法令本文PDF等

何が分かるか:連邦政府のエビデンス構築計画、評価体制、政府データの管理・公開、機密情報の保護と統計利用などを、法律としてどう位置づけたかを確認できます。

最初に読むところ:全体の目次を確認した後、Title Iのエビデンス構築計画と評価責任者に関する規定へ進んでください。

読む際の注意:法律名に2018とありますが、成立は2019年です。掲載先は成立時の法律であり、現在の改正状況や運用実態をこの文書だけで確認できるわけではありません。また、個別政策の因果効果を示す研究ではありません。

公開元:Australian Centre for Evaluation/Australian Government Treasury

施行:2021年12月1日

種別:連邦政府の評価方針

言語・形式:英語/HTML

何が分かるか:評価を事業の設計・運営・見直しに組み込むための原則です。目的に応じた評価、有用性、倫理、信頼性、透明性と、評価結果を使う責任の置き方を確認できます。

最初に読むところ:「Commonwealth evaluation principles」と「Good governance」。誰が結果を検討し、改善を実行するのかに注目してください。

読む際の注意:政府方針として何を求めているかを示す資料です。すべての事業でその原則が達成されていることや、日本でも同じ仕組みが機能することを証明する資料ではありません。

発行:European Commission(欧州委員会)

種別:政策形成・法令の評価に関する公式ガイダンス

言語・形式:英語/案内HTML・ガイドライン等PDF

何が分かるか:問題の把握、選択肢の影響評価、実施後のモニタリング・評価、利害関係者との協議を、政策・法令のサイクルの中で扱う資料です。因果効果の検討と、政策形成全体の手続の違いを確認できます。

最初に読むところ:掲載ページから章別Toolboxへ進み、エビデンスに基づく政策形成、影響評価、モニタリング、評価に対応する章を選んでください。通読を前提にしなくて構いません。

読む際の注意:欧州委員会の政策形成・法令評価の枠組みであり、すべてのEU加盟国に共通する単一のEBPM制度ではありません。ガイドラインとToolboxの更新日も区別してください。

日本の行政事業を、公開資料から確かめる

資料の作成主体:各府省庁

種別:行政事業レビューシート等の公開データベース

対象時点:閲覧時に年度を選択

言語・形式:日本語/ウェブデータベース

何が分かるか:国の予算事業・基金事業について、事業の目的、支出、活動や成果の指標、点検・改善に関する記録を探すための入口です。

最初に読むところ:身近な分野の事業を1つ選び、目的、活動、成果指標、成果の根拠、点検内容を順に確認してください。年度の違いにも注意が必要です。

読む際の注意:各府省庁が作成した公開記録であり、指標の達成だけで事業の因果効果が分かるとは限りません。評価研究が引用されている場合は、その原著にも遡って確認してください。

資料を読んだ後に、確かめたいこと

たとえば、地域の防災訓練の参加者が増えても、それだけで災害時の被害が減ると確認できたわけではありません。学校の読書活動で貸出冊数が増えても、読解力が向上したかは別に確かめる必要があります。これは資料の読み方を説明するための例であり、特定事業の評価結果ではありません。

読んだ資料について、「誰を対象に、何と比較し、何を、いつまで測ったのか」を確認してください。そのうえで、効果の大きさと不確実性、費用、実施条件、便益と負担の分布を分けて考えます。著者・発行主体に加え、資金提供や利益相反の記載も確認すると、根拠の来歴を辿りやすくなります。

資料の数を増やすより、自分の問いに対応する根拠と、その根拠では答えられない部分を見分けることが、このページの使い方です。

参考資料を読むときの、よくある疑問

Q: 政府の公式資料なら、施策の効果も証明されていますか?

Q: 政府の公式資料なら、施策の効果も証明されていますか?

A: 公式資料は、その機関が定めた制度や示した方針を確認するための原典です。ただし、制度の存在や方針の説明と、個別施策の効果を調べた研究は別です。効果を知りたいときは、比較方法や評価結果が記載された資料を確認してください。

Q: 海外の研究で効果があれば、日本でも同じ結果を期待できますか?

Q: 海外の研究で効果があれば、日本でも同じ結果を期待できますか?

A: その研究だけでは判断できません。対象者、制度、実施方法、時期、測定した成果が変わると、結果も変わり得ます。移せる条件と異なる条件を確認し、必要に応じて日本の現場で検証することになります。

Q: 10件すべてを読まなければいけませんか?

Q: 10件すべてを読まなければいけませんか?

A: いいえ。全体像、評価設計、実際の研究、制度、日本の公開資料という目的別に選んでください。掲載順は学習の道筋であり、資料の信頼性や国・制度の順位ではありません。

資料の紹介と読む順番は、EBPM.jpによる編集です。掲載機関・著者による本サイトの監修や推奨を意味しません。制度や公開資料は更新されるため、利用時にはリンク先の版・対象時点も確認してください。

EBPM.jp

EBPM.jpは、EBPM、政策評価、因果推論、国際比較を扱う専門メディアです。記事、Podcast「EBPM新聞」、一次資料を通じて、政策の根拠と限界を検証します。

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