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事例編

主幹

シンガポールCSFとは?――国家フォーサイトを政策に組み込む仕組み

この記事の概要

シンガポールCSF---国家フォーサイト最前線

シンガポール政府のCentre for Strategic Futures(CSF)は、未来を一点予測するのではなく、不確実性、弱い兆候、discontinuities、strategic surprisesを政策計画へ接続する政府内フォーサイト組織です。

CSFの概要と誕生背景

CSFの設立と位置づけ。1980年代末→1995→2003→2009→2015の歴史図

図版の2026年訂正:CSFはPrime Minister’s Office Strategy GroupのFutures Directorate内に位置しますが、最高意思決定層への直接連携、他省庁への命令権、中央集権的な優位性を持つ政策決定機関とは説明できません。将来洞察を形成してdecision-makersへ伝え、各機関のpolicy planningとforesight能力を支援する組織です。

シンガポールでは1980年代末から国防省でfuture planningの試みが始まり、1995年に首相府にScenario Planning Office、2003年にStrategic Policy Office(SPO)、2009年にSPO内にCSFが設置されました。2015年には新設のStrategy Groupの一部となり、2026年現在はPrime Minister’s Office Strategy GroupのFutures Directorate内に位置します。

何をしているのか?主な活動と手法

SP+、Horizon Scanning、FutureCraft、Strategic Futures Network、RAHSをまとめた図

図版の2026年訂正:Strategic Futures NetworkはDeputy Secretary-level officersによるquarterly networkであり、若手実務者ネットワークではありません。staff-level officersには別のSandboxがあります。RAHSは政府foresight能力の発展史で重要な取組ですが、現在のCSFがビッグデータやAIで国家リスクを自動判定する中核システムとして運用しているとは確認できません。

1. シナリオ・プランニング・プラス(SP+)

Scenario Planningを核としつつ、weak signals、black swans、wild cards、discontinuous trendsなどを扱うために複数のツールを組み合わせます。2026年の公式版では、Defining Focus → Environmental Scanning → Sense Making → Developing Possible Futures → Designing Strategies → Monitoring の6工程で整理されています。代表的なツールには、Cynefin Framework Problem Definition、Emerging Issues Analysis、Driving Forces Analysis and Prioritisation、SWOT、Scenario Planning、Backcasting、War-Gaming、Early Warning Systemsがあります。

経済・財政の長期シナリオを政策分析の共通基盤として使う制度は、オランダCPBの記事で比較できます。

2. Horizon Scanning(地平線スキャン)

外部環境を体系的に調べ、変化の性質や速度を理解し、潜在的な課題・機会を発見する活動です。

3. FutureCraft研修

Singapore Civil Service Collegeで実施されるSingapore public officers向けのforesight研修です。2026年現在、FutureCraft 101: Introduction to Foresight、FutureCraft 102: Building Your Toolkit、FutureCraft 201: Scenario Planning Workshopが公式に案内されています。一般向けの民間講座ではありません。

4. Strategic Futures Network

Deputy Secretary-level officersが四半期ごとに集まり、Singaporeに重要な影響を持つemerging trendsを議論します。これとは別に、futuresやstrategic planningに携わるstaff-level officersが隔月で集まり、ongoing projects、ideas、collaborationを共有するSandboxがあります。

5. RAHSの歴史的位置づけ

RAHS(Risk Assessment and Horizon Scanning)はシンガポール政府のforesight・national security capability発展史で重要ですが、2026年現在のCSFがRAHSというAI監視システムを中核運用しているとは断定しません。

未来志向を組織文化に根付かせる仕組み

CSFの特徴は、単発の未来研究ではなく、研修、政府内ネットワーク、外部専門家との交流、methodological toolkitを通じてanticipatory capabilityを政府内に育てることです。各政府機関にもdomain-specificなforesight機能があり、CSFはすべてを一元管理するのではなく、政府横断のネットワーク、方法論、人材育成を通じて各機関の能力を接続・強化します。CSFは年間200人を超えるthought leaders等と交流し、bias、blind spots、new insightsを得ていますが、外部専門家が政府の政策決定へ直接参加する制度という意味ではありません。

CSF制度面の工夫と日本比較の図

図版の2026年訂正:CSF職員の大半が省庁派遣で、若手官僚を必ずCSFへ送り戻す正式なローテーション制度があるとは確認できません。日本にもNISTEPの科学技術予測調査、ホライズン・スキャニング、内閣官房・内閣府・各府省の長期戦略があります。比較軸はforesightの有無ではなく、専任組織・共通方法論・研修・ネットワークとしての制度化です。

2026年版ハンドブック「Thinking About Tomorrow」

2026年2月24日、CSFは「Thinking About Tomorrow: A Handbook for Strategic Foresight」を公開しました。現在のCSFのforesight理解を確認する中心資料で、Foundations、Forms、Footholdsの三部から構成され、「foresightに唯一の正解はない」という立場を示しています。

制度面の工夫(日本との比較)

  • Prime Minister’s Office Strategy Group内の専任組織

  • SP+という共通のmethodological toolkit

  • FutureCraftによる能力形成

  • Deputy Secretary級SFN

  • staff-level Sandbox

  • 外部thought leadersとの継続的ネットワーク

日本にもNISTEPの科学技術予測調査、内閣官房・内閣府・各省の長期戦略やシナリオ分析があります。違いは「未来を考えているか」ではなく、government-wide foresight capabilityを専任組織・研修・ネットワークとしてどの程度一体化しているかにあります。

シンガポールの未来予測機関CSFの深化解説

CSFは政府の政策立案に未来志向を組み込み、中長期の課題や機会を先取りするための専門機能です。

CSFの具体的な政策成果・ケーススタディ

COVID-19期にはCSFがCOVID-19 Shifts Infographic等を公開し、既存トレンドの加速や新しい変化を構造化しました。ただし、国境再開や個別機関の政策成果をCSF単独の因果的成果として帰属させません。

他国の未来予測機関との比較(英国・カナダなど)

英国Government Office for ScienceやPolicy Horizons Canada等にも政府フォーサイト機能があります。組織的位置、政策現場との接続、研修・ネットワーク機能の範囲は国によって異なります。

議会側が政府フォーサイトを審査して政策サイクルへ戻す例として、フィンランド未来委員会も参照できます。

CSFの組織設計上の特徴

CSFは政府中枢に位置しながら、政策決定主体そのものではなく、future trends、discontinuities、strategic surprisesへの洞察を作り、decision-makersへ伝え、policy planningを支援します。

人材育成とコミュニティ

FutureCraftのほか、Strategic Futures Network、Sandbox、Futures Conversations、external networks等を通じ、政府内のforesight communityを育てます。

日本の政策設計・人材育成への示唆

  • foresight専門能力をどこに置くか

  • 政府横断ネットワークをどう作るか

  • 公務員へscenario planning / horizon scanningをどう教育するか

  • 長期視点を予算・政策サイクルのどこへ接続するか

制度をそのままコピーするのではなく、既存制度へどの機能を組み込むかが論点です。シンガポール固有の国家規模、行政制度、首相府の構造、公務員制度を踏まえ、dedicated foresight capability、common methodology、horizon scanning、scenario planning、government-wide network、training、policy cycleへの接続という制度原理を抽出する必要があります。

Strategic ForesightとEBPM

Strategic ForesightはEBPMそのものではありません。EBPMやevaluationが、何が起きたか、何が効いたか、implementation、outcomes、causal effectsを検証するのに対し、Strategic Foresightは、前提が変化したらどうなるか、uncertainty、alternative futures、emerging issues、discontinuities、strategic surpriseを検討します。両者は競合ではなく、政策形成で補完的に用いることができます。

政策介入の因果仮説と検証設計は、ロジックモデルの記事で詳しく扱っています。

FAQ(よくある質問と回答)

Q1. CSFは政府内のどこに位置する組織ですか? A. Prime Minister’s Office Strategy GroupのFutures Directorate内です。

Q2. ワイルドカード思考とは何ですか? A. 発生確率は低くても、現実化した際の影響が大きい出来事をシナリオに含め、政策の盲点や脆弱性を検討する考え方です。

Q3. 日本にもCSFのような政府組織はありますか? A. 同一の制度ではありませんが、日本にもNISTEP等のforesight機能や各府省の長期分析があります。

Q4. CSFでの人材育成は? A. FutureCraft、政府内ネットワーク、実務コミュニティ等を通じて能力形成を行います。

Q5. CSFではAIをどう活用していますか? A. 現在のCSFがRAHSでSNS感情分析等を行っていると断定できる公式資料は確認できないため、そのようには記述しません。RAHSは歴史的な政府プログラムとして扱います。

Q6. なぜCSFは首相府のStrategy Groupにあるのですか? A. whole-of-government strategic planningと長期課題の分析を接続しやすくする制度的位置です。ただしCSF自体が政策決定権を持つわけではありません。

Q7. 他省庁との協働は? A. Strategic Futures Network、Sandbox、各機関のfuturistsとの連携等を通じて横断的に知見を共有します。

Q8. スタッフのローテーションは? A. シンガポール公務員全体にローテーション文化はありますが、CSF固有の正式制度については現在の公式情報で確認できる範囲だけ記述します。

Q9. 未来思考スキルはどう育てる? A. FutureCraft 101 / 102 / 201等の研修と、継続的な実務者ネットワークを組み合わせます。

Q10. 他国にも類似組織は? A. 英国、カナダ等に政府foresight組織があり、フィンランドには議会側の未来委員会があります。ただし組織的位置と権限は異なります。

参考文献・出典

  1. Centre for Strategic Futures. Who We Are. https://www.csf.gov.sg/who-we-are/

  2. Centre for Strategic Futures. Our Approach. https://www.csf.gov.sg/our-work/our-approach/

  3. Centre for Strategic Futures. FAQ. https://www.csf.gov.sg/faq/

  4. Centre for Strategic Futures. Networks. https://www.csf.gov.sg/our-work/networks/

  5. Centre for Strategic Futures. Capability Development / FutureCraft. https://www.csf.gov.sg/our-work/cap-dev/

  6. Centre for Strategic Futures. Thinking About Tomorrow: A Handbook for Strategic Foresight. 2026. https://www.csf.gov.sg/media-centre/thinking-about-tomorrow/

  7. Prime Minister’s Office Strategy Group. Who We Are. https://www.strategygroup.gov.sg/who-we-are/

  8. Centre for Strategic Futures. COVID-19 Shifts Infographic. https://www.csf.gov.sg/media-centre/publications/csf-covid-19-shifts-infographic/

  9. Singapore Civil Service College. Thinking About the Future: What the Public Service Can Do.

  10. Singapore Ministry of Defence. RAHS historical materials.

  11. Policy Horizons Canada. About Us. https://horizons.service.canada.ca/en/about-us/index.shtml

  12. 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)公式サイト. https://www.nistep.go.jp/

初出:2025年10月4日。EBPM.jpへの移管にあたり、原文の構成を維持しつつ、2026年時点のCSF公式資料等に基づき組織位置、SP+、FutureCraft、ネットワーク、RAHS、国際比較を局所更新しました。

初出:2025年10月4日。EBPM.jpへの移管にあたり、2026年時点の一次資料に基づき再検証・更新。

初出:2025年10月4日。EBPM.jpへの移管にあたり、2026年時点の一次資料に基づき再検証・更新。

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